ワークシェアリングとは?

今、日本国内の失業者数は過去最悪の水準まで落ち込んでいます。
 雇用不安が広がるなか、「ワークシェアリング」という言葉がよく新聞などに出るようになりました。さて、この「ワークシェアリング」とはどういう意味なのでしょうか?

      ワークシェアリング…労働時間を短縮し、「仕事」を「分かち合い」、雇用の確保、雇用の創出をすること

◆諸外国の状況は…
 欧州では、雇用拡大の手段として、ワークシェアリングが様々な形態で導入され成果をあげています。
 具体的には、フランスでは、法定労働時間を39時間から35時間にすることで雇用を生み出しました。また、ドイツでは高齢者の時短分を若年労働者に振り向けています。
 オランダでは、同一労働同一賃金の原則を生かし、フルタイムとパートタイムの時給あたりの格差をなくすることを主眼としました。そこで、パートタイムを「短時間で働く正規雇用労働者」と法的に位置付け、パートかフルタイムかは労働者が選択するようにしました。これは時短によりパートタイム労働者が増え雇用が創出された例ですが、使用者側が実質的な賃金を切り下げる結果とはなっていません。政府が減税措置や補助金を出して生活を保障し、社会保障による生活の安定と労働者保護があいまって実現できた雇用形態です。
 この、「オランダ型」に日本の経営者側も注目し「だから雇用の多様化が必要だ」と主張しています。しかし、前述のとおりオランダでは、こうした過程を通じて社会保障の充実により実質賃金引下げに歯止めをかけ、労働法を改正してフルタイムとパートタイムの均等待遇を行い、労働者の意思によるフルタイム・パートタイム労働の相互転換権などを整えてきました。
 このような経過及び現状を見ずに単に「オランダ型」(多様就労型)のワークシェアリングを導入しても、現在の日本の社会情勢にそぐわないものとなってしまいます。

国内の状況は…
 経営者側はリストラ・合理化を行い失業者を増大させ、政府は「構造改革」として医療費の個人負担を増やそうとしています。これでは、政府・経営者がその責任を放棄し、今までの借金を国民・労働者に押し付けるようなものです。
 政府・経営者側は、現下の厳しい社会・雇用情勢を逆手にとって「雇用確保」を建前にしながら、「ワークシェアリング」の導入を進めようとしているのです。

◆その狙いは…
 政府・当局は「ワークシェアリング」の導入により、何を狙っているのでしょうか?
 それは、「総額人件費の抑制」です。このことは、経営者で組織している日経連の労働問題研究委員会の報告で【「雇用の維持・確保」と「総額人件費の抑制」を両立するため、緊急避難的なワークシェアリングが必要】としていることからも明らかです。


 例えば現在
月給240,000円×7人=1,680,000円 の人件費がかかるところを、賃金カットとパート採用により、
月給210,000円×7人+140,000円(パート・臨職)=1,610,000円  にするということです。

240,000×7/8)…短縮した時間分の賃金をカットする。 
       

 このことにより、企業自体の労働時間(生産能力)は変わりませんが、「総額人件費の抑制」はできることになります。

◆ワークシェアリングの類型

類  型 手   法 事 例 と 背 景
雇用維持型(緊急避難型) 一時的に労働時間を短縮し、賃金削減を実施 企業業績の低迷(日野自動車、フォルクスワーゲンなど)
雇用維持型(中高年対策型) 中高年者の短時間勤務などによる雇用確保 中高年を中心として余剰人員の発生/60歳代前半の雇用延長(日本など)
雇用創出型 恒久的に法定労働時間の短縮などを実施 高失業率の慢性化(フランスなど)
多様就業対応型 正規職員についても短時間勤務などを導入し働き方を多様化 有能な人材確保/就労ニーズの多様化/女性・高齢者の活用/仕事と家庭の両立(オランダなど)

   (出典)日経連労働問題研究委員会

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