島内 憲夫氏によるヘルスプロモーション解説 |
1 日本には4つの方向からヘルスプロモーションが入ってきた.
@一次予防の方法としての医学的なヘルスプロモーション(レベル、クラーク等)
Aライフスタイルと環境を意識したヘルスプロモーション(ラロンド)
BWHOが提唱した社会科学的なヘルスプロモーション(イローナ・キックプッシュ)
※島内氏はWHOのヘルスプロモーションをわが国に紹介した人
C健康教育と環境支援を組み合わせたヘルスプロモーション(グリーン)PPモデル
2 ヘルスプロモーションのキーワード
@唱道
A能力の付与
B調停
Cインボルブメント
D住民参加
Eヘルシー・シティ
F素人の健康感
G地球サイズの愛
Helth promotion is a peace promotion!
3 アルマ・アタ宣言とオタワ憲章
アルマ・アタ宣言 |
オタワ憲章 |
プライマリ・ヘルスケア 発展途上国向け 病院中心 専門家中心 病気を治す |
ヘルスプロモーション 先進団向け 家族・地域社会中心 市民中心 健康をつくる |
4 ヘルスプロモーション
@理 念
すべての人々があらゆる生活舞台一労働・学習・余暇そして愛の場−で健康を享受することのできる公正な社会 の創造。
A原 理
@特定の病気を持つ人々に焦点を当てるのではなく、日常生活を営んでいるすべての人々に目を向けなければな らない。
A健康を規定している条件や要因に向けて行われるべきである,
B相互に補完的な多種類のアプローチあるいは方法を必要としている。
C個人あるいはグループによる効果的な、また具体的な住民参加を求めている。
Dプライマリ・ヘルスケアの分野における保健・医療専門家の役割発揮に大きく依存している。
5 ヘルスプロモーション活動のプロセスと方法
@ヘルスプロモーションの3つのプロセス
@唱道‥………‥辻説法.あらゆる場で「健康には価値がある」「健康であることは意義ある」ということを、 先 頭に立って言い続けること.
A能力の付与…… 知識と技節の伝達.(健康学習)
B調停……‥‥‥ 全生活的問題である健康問題を改善するための分野間協力。
平和・住居・食物・収入 安定した生態系 生存のための諸資源 社会的正義と公正 |
のための調停 |
Aヘルスプロモーションの5つの活動方法
i 健康的な公共政策づくり
A健康を支援する環境づくり
B地域活動の強化
C個人技術の開発
Dヘルスサービスの方向転換
6 ヘルシー・シティとその特質
@ヘルシー・シティとは
ヨーロッパの各都市に住んでいる人々の健康とWell・beingを高めるため、地域に基盤を置いたヘルスプロモーション活動(ニュー・パブリックヘルス活動)を全ヨーロッパで展開されている。
Aヘルシー・シティの特質
i 質の高い、清潔で安全な物理的環境(住宅の質も含む)
A 現状の安定と長期間維持可能なエコシステム
B 協力で相互支援的で、しかも搾取することのないコミュニティ
C 自らの生活、健康そしてWell・beingに関する決定への市民の高度な参加と調整
D すべての市民の基本的ニーズ(食料、水、避難場所、収入、安全、労働)に関する集会
E 広範囲な接触、相互作用そして交流のための機会をともなう広範囲な経済と資源へのアクセス
F 多様で、活気があり、しかも斬新な市の経済
G 過去、市民の文化的また生物学的遺産、および他のグループや個人との連結性の促進
H 適合可能であり、しかも先行する特質を高めるような(市の)形態
I すべての市民への適切な公衆衛生サービスと疾病養護サービスの最適なレベル
I@高度な健康状態(高度な水準のポジティプ・ヘルスと低い疾病水準)
7 ヘルスプロモーションを進める戦術(ツール)
@地域づくり型保健活動
Aプリシード・プロシードモデル
BPCM(プロジェクト・サイクル・マネジメント)
8 ヘルスプロモーションを進めるその他の科学・技術等
@疫学・統計学
A社会生態学等社会科学
BKJ法
C判断力を強化するケースメソッド
Dグループ・インタピュー技法
Eソーシャルマーケッティング
Fカウンセリング
Gプレゼンテーション
9 「健康日本21」とヘルスプロモーション(公衆衛生情報99年8月号より)
@「健康日本21」は病気のリスクファクターを探し、それをコントロールする、きわめて医学的な発想である。
A健康づくり教室は、病気予防教室、病気を知ろう会ではなく、遊び、恋愛、音楽を聴く、働く、前向きに生きる、といったことを目標にすべきだ。
BWHOが主張し続けているのは、日本の昔からのお家芸、コミュニティ中心の地域活動の強化である。個人主義のヨーロッパやアメリカの人たちが、日本人の家族、地域社会を大切にする心が、実は健康な地域社会をつくっている、ということに気づいた。
C「健康日本21」は環廣チェンジを大切にするヘルスプロモーションの考え方を挙げながら、手法は、アメリカの「ヘルシーピープル2000」に基づいた自己責任のライフスタイル・チェンジ中心になっている。
D医者や保健婦が変われば、国民も「変わらなくては」となる.一番変わるべきは、病気観を持っている専門職である。自分が変わらすに人だけ変えようというのは、教育学の立場からみれば、甚だおかしい、と言わざるを得ない。