高度技術専門学院の短大化に関わる提言(案)

岩手県職業訓練職員協議会

1.はじめに
 平成12年12月に策定された県立施設の再編整備基本計画では、高度技術専門学院が短大化されることにより、現在の4学科(機械、制御、情報、設備)が3学科に再編される予定になっています。今回の短大化で設置される学科として何が良いのか、職訓協では日常の職業能力開発行政に携わっている経験と知識を基に、若手職員を中心として検討を行ってきました。先行き不透明な経済情勢や、より多様化する産業社会のもとで、様々な立場・訓練職種の指導員が話し合い、結論を出すのは容易ではありませんでした。しかし、県民つまり私達の施設で学ぶ学生と、就職先となる企業の立場に立った議論をしてきたつもりです。訓練ニーズの分析から設置学科の検討、望ましい訓練体制のあり方について、私たちが検討した結論を提言いたしますので、再編整備実施計画策定の一助にして頂ければ幸いです。

2.訓練ニーズの分析
 設置学科を検討するにあたって大切なのは、卒業生の就職に主眼を置いたニーズの把握が重要です。
このことについて、まずパブリックコメントとして県民から挙げられたニーズと、既存学科において、学生の就職指導から得られた企業ニーズを基に分析を行いました。また、平成12年に報告された人材ニーズ調査(日本商工会議所)および平成10年に職訓協で実施した事業所向けアンケート調査も参考にしました。
(1)パブリックコメントで挙げられたニーズ
 @土木建築系、産業デザイン系、情報環境系の充実(水沢市からの陳情)
 A建設・土木関係で資格が取れる学科の設置、情報関係にサービス的要素を取り入れた内容で充実される(県南地域における市町村商工会、職業訓練協会参加による説明会)
 B北上情報処理学園との競合は避けて欲しい
(2)既存学科から得られるニーズ
 @機械・メカトロニクス系の就職状況が短大・学院とも良好であることから、企業ニーズは高いこと
 A学院・設備システム科は、県内の特定地域にとらわれずに、給排水衛生設備施工業者等に就職しており、状況は良好であること
 B短大・建築科や自動車整備関係は、就職率100%を維持しており、他業種への就職も極めて少ない。
 C短大・電子技術科は、県内企業を中心として認知度が上がって来ており、就職率も上がって来ていること
その他、既存学科の中では、入学希望者は多いがそれほど就職が容易でないものとして、情報系、産業デザイン系があります。また学院の制御システム科は、求人はあるものの学生が他職種への就職を求めるという傾向が強くなりつつあります。
 一方、高校新卒者を中心とした入学生の職業意識、すなわち訓練ニーズも重要です。設置学科に対して応募者が少なければ、学生の能力レベルが低下するため、企業ニーズか応える人材を養成できるかどうか疑問です。企業ニーズがあると考えられる既存設置学科の中で、特に機械・メカトロニクス系の科は応募者が少なく、情報・建築・産業デザインを除いた他の学科でも決して応募が多いとは言えません。しかし、入学生の希望や意欲ばかりでは就職に結びつくのは現実には厳しく、やはり企業ニーズに合わせた設置学科の検討が重要と言わざるを得ません。入学生に対しては、魅力あるカリキュラムを創り上げ、アピールするのが、私達の役目と考えています。

3.設置学科の検討
 前述の訓練ニーズから、若手職員で議論した結果、設置学科の方向性として、学院の設置学科のうち就職面で実績のある機械システム科、制御システム科、設備システム科を起点として、高度職業訓練として特色付けを行うのが良いと考えました。地域からは、情報系・デザイン系の科目について要望もありましたが、その求人数も多くは見込まれないため、本校(矢巾)の情報技術科、産業デザイン科で対応可能と考えます。
 そして、以下に示す学科が、短大水沢校に設置すべき学科として相応しいのではないかと考えました。学科の名称については、入学生にとって魅力を感じる名称を、別途検討する必要があると思われます。
(1)居住システム系 建築設備科
 既存の設備システム科の就職も順調であること、地域として、建築・土木系の職種を要望していることから、建築に関する基礎学科、土木工学などの要素を取り入れたカリキュラムとします。建築構造を理解し給排水・衛生、空調、消防設備の施工をはじめ、設計・管理ができる技術者を養成します。また設備に関連する資格を数多く取れることを特色とします。
(2)電気・電子システム系 電気技術科
 既存の制御システム科は、カリキュラム上、短大・電子技術科と競合する部分が多く、かつ制御系職種への就職が減りつつあります。そこで、電気工事等の電気工学分野を中心とした能力開発施設が県内にないことから、電気技術科を設置することとします。しかし、電気工事士等の養成は工業高校でも行われていることから、「ネットワーク」をキーワードとして、通信回線の敷設から、関連機器の設置・保守をソフトウェアレベルまで実施できる技術者を養成すること、関連資格を多く取れることを特色とします。
(3)機械システム系学科
 機械システム科は求人が多いにもかかわらず、入学応募者が少ないことから企業ニーズを満足している言えません。そこで、機械加工中心に加えて、情報技術の活用を前面に出したカリキュラムを組んで学生確保に配慮することが必要と思われます。機械系職種は、基本加工技術からコンピュータを利用した生産システムの自動化まで幅広い技術技能を必要とするため、コース制を導入することを特色とします。
(4)能力開発研修科
 短大水沢校は、県南地区の能力開発の拠点となることから、盛岡地区と同等の機能が求めらます。また産業のハイテク化、多様化に必要な人材を新規学卒者向け訓練のみで行うことには限界があるため、研修科を設置して、高度職業訓練(短期)やオーダーメイド型専門研修システムを実施する必要があります。

4.短大化に伴う訓練実施体制の整備について
 短大水沢校を開設するにあたっては、県南の拠点として、本校(矢巾)と同等の機能が求められます。同じ短期大学校でありながら、施設・設備や指導体制に違いがあると、学生の訓練意欲の減退から始まり、短大の信頼低下にも繋がりかねません。本校および水沢校を1つの短期大学校と捉え、訓練実施体制を整備する必要があります。私たちの提言を次に示します。

(1)水沢校設置までの準備体制について
 @短大設置の準備体制について、現状の労政能力開発課および学院の体制では、担当者に非常に多くの負担が掛かるため、短大準備室を設ける。
 A学院と短大水沢校が併設されないようにする。短大化前後の学生が、意欲を失わないように、短大の学生募集の2年前に、学院としての募集を終了する。
 B高度職業訓練に携わる職員が増えるために、その指導員研修を十分に行う。

(2)職員体制のあり方について
 @教務学生課を設置する。
 A本校と水沢校共通で学生募集および就職指導業務を行う体制を構築する。
 B従来の学科単位の指導ではなく、指導員が専門性を生かし、科あるいは県内各施設を横断して指導できるような指導体制を確立する。
 C庁舎管理上の負担が大きいので、守衛を配置する。それが不可能であれば、入退室カード等により無人化の努力をする。

(3)実習設備・建物について
 @各学科の実習設備は訓練基準を十分に満たしたものを準備する。
 A年度毎の設備更新についても本校と同等に予算措置する。
 B学生会館(食堂)、学生寮(管理人常駐)、図書室についても、本校と同等に整備する。
 C訓練内容の高度化により現在の職員室では教材準備等に狭くなるので、学科ごとに教材準備室を設ける。
 D県立施設のセンタースクールとして機能するために、県内各施設間で情報ネットワークを構築し、求人・就職情報や教材、訓練ニーズ把握などの情報を共有できるようにする。

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